アンブッシュマーケティングの落とし穴

広報担当者必見!アンブッシュマーケティングの落とし穴と対処法

今年は4年に1度の祭典であるオリンピックが開催されます。
この機会に多くの企業が自社のアピールをしようと模索しているのではないでしょうか?
前回の東京大会開催時にも多くの企業がオリンピックに際して様々な施策を検討・実施していました。
さて今回は、そんなオリンピックと企業活動に関連するものとして「アンブッシュマーケティング」を取り上げます。

目次[非表示]

  1. 1.アンブッシュマーケティングとは
  2. 2.違法なアンブッシュマーケティングを行わないために
    1. 2.1.知的財産
      1. 2.1.1.①商標権
      2. 2.1.2.②不正競争の防止
      3. 2.1.3.③著作権
    2. 2.2.アンブッシュマーケティングに関する規則
  3. 3.アンブッシュマーケティングで出来ること
  4. 4.事例紹介
    1. 4.1.南アフリカKFC:2018年ロシアワールドカップ時のCM
  5. 5.メリット・デメリット
    1. 5.1.メリット
    2. 5.2.デメリット
  6. 6.終わりに


アンブッシュマーケティングとは

「アンブッシュマーケティング(便乗商法)」とは、世界的なイベントや著名なモノ・コトと無関係の企業がそれらと結び付けて打ち出す宣伝手法のことを指します。
イベントが開催されるタイミングを見計らって広告・宣伝を行うことから「待ち伏せマーケティング」と呼ばれることもあります。
大規模なイベントと関連付けて広報PRやマーケティングが行えるため、興味を引くことができ、認知度・好感度の向上に効果がると言われています。
しかし、公式スポンサーではない企業が、あたかも公式スポンサーやライセンス認可企業であるかのように振る舞い、誤認させてしまう場合は問題となります。
アンブッシュマーケティングは一歩間違えるとイベントの主催組織や団体の制定したガイドラインへの抵触、法令違反となる場合があります。
 
ではどのような場合に違法となるのかお話しします。

違法なアンブッシュマーケティングを行わないために

広報PRやマーケティングの担当者は世界的なイベントに合わせて、PR活動や広告宣伝活動を行いたいと考える方も多いと思います。
しかし、公式スポンサーでない企業がこのようなイベントに便乗しようとすると、法律やガイドラインに違反する可能性があります。
違反を起こさないために確認・認識の必要がある注意点を2つ(知的財産と規則)について説明します。

知的財産

イベントに合わせた宣伝には知的財産が関わってくるため、理解しておくと良いでしょう。
「知的財産」とは、人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創造物などには財産的な価値があり、それらを総称して呼びます。知的財産は法律で権利として保護されるものがあり、その権利を「知的財産権」と呼びます。
知的財産権の例として、特許権、意匠権、商標権、著作権などがあります。
中でもアンブッシュマーケティングに関係する権利・法律を3つ説明します。

①商標権

大規模なイベントでは、ロゴマークや名称、スローガンなど多数の商標権を有しています。
例えば、「オリンピック」という名称や「5色の輪のマーク」などがこれに当たります。
ロゴマークや名称の無断使用は商標権の侵害となり、法的措置が取られる場合があります。

②不正競争の防止

上で述べた知的財産を保護する法律の1つとして、事業間の公正な競争と健全な経済の発展を目的に作られた法律が不正競争防止法です。
商標として登録していない商品等表示(団体やイベントの名称、ロゴ、マスコットキャラクター等)であっても、他人の商品等と混同を生じさせる行為や使用を禁止する規定があります。
世間に広く知られたものや著名なものを勝手に使用した場合、不正競争防止法に接触することになります。

③著作権

イベントで使用されるアイテムや、過去を含むイベントの画像や映像に関して著作権が発生します。
しかし、アンブッシュマーケティングとの関係では規制範囲が限定的になります。
イベント会場・競技場やその付近で商品の販売や広告の表示をすることについては、著作権法を適用することはありません。
著作権については、以前のコラムで詳しく解説していますのでこちらをご覧ください。

アンブッシュマーケティングに関する規則

大規模なイベントでは、一般的にアンブッシュマーケティングに関してガイドラインが定められています。
これらの内容はイベントによって異なるため事前に確認しておく必要があります。
 
例えば2020年の東京オリンピックでは、「Brand Protection Guidelines 大会ブランド保護基準」でJOCの知的財産保護について明記されています。「がんばれ!ニッポン!」「ロンドン、リオそして東京へ」「2020へカウントダウン」といった用語を用いて大会を想起させることは禁止されていました。
直接的な表現以外にも、イベントを連想させる意味や用語などを用いて商品やサービスと関連付けることもガイドラインに抵触すると判断される場合があるので、事前の確認と注意が必要です。
また、代表選手の肖像権に関しても「知的財産保護·日本代表選手等の肖像使用について-マーケティングガイドライン-」に明記されています。
企業に所属している選手もいますし、企業と選手がスポンサー契約をしている場合もあります。これらの場合に限らず、選手の写真や画像は選手や企業に帰属していて、原則として勝手に使えないものと考えるべきです。
 
以上の2つの注意点をしっかり確認して、違法なアンブッシュマーケティングとならないように気を付けましょう。

アンブッシュマーケティングで出来ること

ここまでは、アンブッシュマーケティングで違法となる場合について説明してきました。
では、アンブッシュマーケティングで出来ることはどのようなものでしょうか?
 
先ほど、著作権や商標権について説明しましたが、これらに抵触しないものがあります。
それが、知的財産として法律上保護されないものです。
例えば、東京オリンピックであれば「東京」「TOKYO」「2020年」といった地名や年数などの著作物にならないものです。組み合わせて使う場合は注意が必要です。
他にも、モノ・コトとして動物・植物やスポーツ、イメージとしての現象や色そのものなども法律上保護されてないものは利用可能です。
 
東京オリンピックに際して、アメリカのオリンピック・パラリンピック委員会が定めたガイドラインでは「企業所属の代表選手が自身のSNSで企業名や企業ロゴを1回だけ使用できる」といったルールもあります。
このような利用可能範囲を定めた「ホワイトリスト」が提示されている場合もあるため、事前に確認しましょう。
 

事例紹介

最後にアンブッシュマーケティングでセーフと判断された事例を1つご紹介します。

南アフリカKFC:2018年ロシアワールドカップ時のCM

内容は
・試合中のラフプレーを大げさに痛がり転げまわっていた選手がそのままKFCの店舗に転がり込む
といったものです。
このCMは「ワールドカップ」といった名称を使用せずに、知的財産として保護されない「サッカー」を用いて大会を想起させた例となります。
このように、法律に抵触しない内容で特定のイベントやモノ・コトについて想起させる手法を考えることが重要になります。
 
しかし、ガイドラインに抵触しないギリギリの宣伝を行った場合、世間や業界からの批判を受ける可能性がある事も認識しておく必要があるでしょう。

メリット・デメリット

ここまで、アンブッシュマーケティングについて説明してきました。
そこで簡単に、成功した場合のメリット、失敗した場合のデメリットをまとめます。

メリット

・宣伝事例が記憶に残りやすい
・商品や企業の認知度が大きく向上する
・商品や企業のブランドイメージが向上する
・低コストで大きい宣伝効果を得られる

デメリット

・法的に訴えられる
・損害賠償が発生する
・世間や業界から批判される
・ネットで炎上する
・商品や企業のブランドイメージが損なわれる

成功した場合は、宣伝効果が得られるだけでなく、商品や企業のブランドイメージや宣伝事例が時代を経ても記憶に残ります。
しかし失敗した場合は、損害賠償によって宣伝コスト以上に費用がかかり、ブランドイメージにも大きく傷が付きます。昨今ではネットでの炎上も考えられるため、その対応への人的負担もかかることになります。最悪の場合、通常業務に支障をきたす恐れもあります。

終わりに

注目度の高いイベントに便乗して広報PRやマーケティングを行うことは簡単なことではありません。
昨今は企業SNSなども増え、思わぬところでガイドラインや規定に抵触する可能性があります。
ガイドラインや規定に抵触した場合、早急な広報対応と情報収集が求められます。
事前対策として危機管理広報マニュアルの策定や情報のモニタリングを日々行っておくと早期の対応が可能になるでしょう。

ワイズワークスプロジェクトは、リスク情報をはじめ、知的財産やブランドのネットモニタリングも行っております。また、炎上発生時の対応について、リスクマネジメントサービスもご提供しております。


画像提供:PIXTA

危機管理情報調査部
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