コラム

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「非がない炎上」について(2)~リスクマネージメントコラム~

今回は、「非がない炎上」への対応についての2回目のコラムです。

目次[非表示]

  1. 1.炎上のタイプ
  2. 2.コラムの予定
  3. 3.「非実在型炎上」とは
    1. 3.1.非実在型炎上の対応フロー
    2. 3.2.事例1
      1. 3.2.1.インスタントラーメンのPR漫画(2020年)
      2. 3.2.2.企業の対応と消費者の反応
      3. 3.2.3.どのような点が良かったか?
    3. 3.3.事例2
      1. 3.3.1.スープ専門店の離乳食無料提供サービス(2023年)
      2. 3.3.2.企業の対応と消費者の反応
      3. 3.3.3.どのような点が良かったか?
  4. 4.「非実在型炎上」への反論のポイント
    1. 4.1.①情報収集と事実確認(何が問題となっているか把握する)
    2. 4.2.②反論のタイミングの見極め(コメントはすぐさま出す必要はない)
    3. 4.3.③企業としてのメッセージの確認
    4. 4.4.④メッセージの一貫性の維持
    5. 4.5.⑤様々なご意見を頂戴しております」は、もはや常套句と考える
    6. 4.6.⑥安易に謝罪しない
    7. 4.7.⑦影響が及ぶ範囲を把握する


炎上のタイプ

前回、「非がない炎上」には下記の3つのタイプがあると説明しました。

1.デマや誤情報による炎上・・・最近は陰謀論者など、勝手な憶測によるものも多い。
2.非実在型炎上・・・炎上ではないのにメディア等が「炎上」と騒ぎ立てることで作られてしまう”炎上”。
3.客テロによる炎上・・・客の迷惑行為により引き起こされる炎上。飲食業界で発生することが多い。

このような炎上が起きた際の対応には、「静観」と「反論」がありますが、本コラムでは「反論」にフォーカスしていきます。

2回目の今回は、「非実在型炎上」が起きた場合の反論について考察したいと思います。

コラムの予定

1回目:デマや誤情報による炎上への反論
2回目:非実在型炎上への反論(今回)
3回目:客テロによる炎上への反論、まとめ

「非実在型炎上」とは

非実在型炎上は、企業への批判は少数しかないにも関わらず、メディア等が「炎上」と報じることで作られてしまう”炎上”です。
例えば、
・少数の批判しかないのに、誇張して「炎上」と報じる
・少数の批判に対しての批判が殺到している様子を「炎上」と報じる
といったパターンがあります。
いずれにせよ、企業に批判が殺到しているような印象を与えますし、また当事者不在の”炎上”は、勝手な解釈などが加わったりしてあらぬ誤解を生むリスクもあります。

では、そのような事態に陥った時、どのように反論すれば良いでしょうか。

非実在型炎上の対応フロー

以下は、非実在型炎上が発生した場合の対応フローです。

対応は、「静観」か「反論」のいずれかになります。
非実在型炎上の発生によって、意図しない情報の伝わり方をしたり、それにより企業イメージの低下や売上やサービスの提供に影響がでる(企業活動に影響がでる)と判断される場合、反論を行なうべきです。

次に、実際にあった非実在型炎上に反論した企業の例を見てみましょう。

事例1

インスタントラーメンのPR漫画(2020年)

食品メーカーの公式Twitterが掲載したPR漫画のストーリーに一部の層から批判の声が寄せられ、続編の公開が延期となった。そのような批判に対しては「いちゃもん」などと捉える人が圧倒的で、「炎上」とは言えない状況であったが、複数のまとめサイトやWEBメディアが「○○(企業名)のPR漫画が炎上」と伝えた。

企業の対応と消費者の反応

→ 一部の批判の声を受け、企業側は「様々なご意見を頂戴しております。今後の掲載につきまして現在精査しております。しばらくお待ちください」とTwitter上でアナウンスをした。
→ 1週間後、「いただいたご意見を真摯に受け止め、次回以降の内容を精査したうえで本作品の公開を再開いたします」と発表。
→ 加えて、あらすじや台詞などの原作は自社の責任の元で制作・公開しているため、原作者ではない作画担当に対するコメントは差し控えてほしいとお願いをした。
→ 続編の漫画は「作・広告制作チーム」の表記を追加し、批判の種になり得るキャラクターは登場しなかった。
→ この対応に消費者からは「クレーマーに屈しなかった」「イラストレーターに批判が向かないようにした」「商品を買って応援しよう」などの称賛の声が集まった。

どのような点が良かったか?

→ 批判に対して謝罪のコメントは行わなかった。(『何も悪いことはしていない』という意思表示)
→ しかしながら、「いただいたご意見を真摯に受け止め、次回以降の内容を精査」と、批判の声を受け止める姿勢も示した。
→ さらに、作画担当のイラストレーターに批判が向かないよう、責任の所在を明示した。

事例2

スープ専門店の離乳食無料提供サービス(2023年)

スープ専門の飲食チェーンが全店で離乳食の無料提供を行なうと発表したところ、一部から「特定の人だけ優遇されるのはずるい」「ひとり客が入りづらくなる」等の批判や子どもを嫌悪するような声が寄せられた(同店は女性が一人で入りやすいとされていた)。さらには赤ちゃんモデルの容姿にまで言いがかりをつける人も出てきたことで、”批判者への批判”が激化。同社の取り組みに対する批判は少数であり「炎上」と言える状態ではなかったが、消費者同士が激しく対立する様子をまとめサイト等は「スープ専門店が炎上」と取り上げた。

企業の対応と消費者の反応

→ 騒動から1週間後、HP上に「離乳食提供開始の反響を受けまして」と題したコメントを掲載。 
→ これまでコメントを控えていた理由から始まり、どのような想いで今回の取り組みを始め、何を実現したいのか、また特定の客だけを優遇するような考えはないことを”自分たちの言葉”で伝えた。
→ なお、このコメントにおいて「お騒がせして~」等の謝罪の文言はなかった。
→ 謝罪なしの毅然とした態度や企業の強い信念に賞賛の声が集まった。

どのような点が良かったか?

→ 安易に謝罪しなかった(お騒がせして~、誤解を招き~etc.)
→ 企業理念の元、これまで一貫した取り組みを行なってきたことを説明し、説得力を持たせた。またこれにより、これまで行なってきた取り組みと企業理念を周知させた。
→ 一方で、批判的な立場の人も切り捨てない姿勢も示した
→ 毅然とした態度ながらも柔らかな言葉選び、謙虚な姿勢で反感を生まなかった

これらの事例から、デマや誤情報による炎上に反論する際は、次の点がポイントになります。

「非実在型炎上」への反論のポイント

①情報収集と事実確認(何が問題となっているか把握する)

→ ネット上の書き込みを分析し、何が問題となっているか的確に把握し、反論に備える

②反論のタイミングの見極め(コメントはすぐさま出す必要はない)

→ 様々な意見にしっかり目を通している印象を与える(≒早すぎる対応は「消費者の声を受け止めている」という印象が薄くなる場合も)
→ 騒動の最中は避けつつも、1週間以内にはコメントを出すのが望ましいと考える
→ ただし、落ち着いた頃にコメントしても、伝えたいメッセージが多くの人に届かない可能性がある

③企業としてのメッセージの確認

→ どのステークホルダーに対して「何を伝えたいのか(メッセージ)」を明確にする

④メッセージの一貫性の維持

→ 臨機応変な対応は必要だが、基本的なメッセージはぶれないようにする。

⑤様々なご意見を頂戴しております」は、もはや常套句と考える

→ 批判意見を含め、受け止めていることを示す

⑥安易に謝罪しない

→ 本件に関して自社に非がないのであれば、一貫性を持ってしっかりした態度で対応する
→ 批判への安易な謝罪は、擁護してくれる人たちをがっかりさせることにもなる

⑦影響が及ぶ範囲を把握する

→ 取引先など関係各所にクレームが向かう場合があることも認識し、対策する(取引先に炎上の状況を共有する、責任の所在や問い合わせ先を明示する等)。

本テーマの最終回となる次回は、「客テロによる炎上への反論」におけるポイントの考察とこれまでの総括を行ないます。
どうぞ宜しくお願いいたします!

炎上対応は初動(リスクの早期発見、分析)がその後を左右します。

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